序章「息をするように必死になれ」
じっとりとした湿気が肌にまとわりつく深夜。
3年前に独立した整体師のAさんは、誰もいない整骨院の待合室のソファーに大の字になっていた。
右手には安物の焼酎をロックで入れたグラス、左手にはスマートフォン。
そのスマホの画面には、赤い下降線を描くFXのチャートが不気味に映し出されている。
コツン、とグラスを置く音だけが、やけに静かな空間に響いた。
「またかよ…」
タバコを吸おうと院の外に出たAさんが吐き捨てたその言葉は、タバコの煙とともに虚しく空に消えていく。
今日の売上は、わずか1万2千円。
家賃と光熱費を日割りで計算すれば、それだけで赤字だ。
かつては「地域で一番の整骨院を作る」と夢を語り、愛妻も応援してくれていた。
しかし、その面影はもうどこにもない。
オープン当初はいたスタッフも、先月ついに最後の一人が辞めていった。
「院長のやる気が見えません」という置き手紙を残して。
返す言葉もなかった。
予約の電話が鳴ることも稀になり、日中は暇を持余しては、スマホでパチンコの新台情報を眺めるか、FXのチャートに一喜一憂するだけの日々。
夜になれば、その日のわずかな売上を握りしめて近所のパチンコ店へ吸い込まれ、負ければ安酒を煽って現実から目を背ける。
悪循環という言葉すら、生ぬるく感じた。
今日も深夜に帰宅すれば、食卓にはラップのかかった冷たい食事がポツンと置かれているだけだろう。
寝室からは、愛妻と5歳になる息子の寝息が聞こえてくる。
その寝顔を見るのが、日に日に怖くなっていた。
「ごめんな」と心の中で呟くが、その声が彼らに届くことはない。
期待を裏切り続けてきた男の謝罪など、何の価値もないことをAさん自身が一番よく分かっていた。
「俺だって、頑張ってるつもりなんだけどな…」
誰に言うでもない言い訳が、喉から漏れる。
だが、その言葉が嘘であることも知っている。
頑張っているフリをしているだけ。
本気で向き合うことから逃げ続けてきただけだ。
その時だった…
どうしようもない虚しさを紛らわすため、惰性で流していたスマートフォンのYouTubeから、力強い声が響いてきた。
海外の自己啓発スピーチか何かだろう。
小さな画面には、情熱的に語りかける一人のアメリカ人男性が映っていた。
『息をしている時と同じように成功したいと本気で思った時、あなたは成功する』
何を言っているんだ、ただの根性論か。
Aさんは鼻で笑おうとした。
だが、なぜかその言葉だけが、錆びついた心のギアにガリッと音を立てて引っかかった。
「息をするように…必死に…?」
無意識に、自分の胸に手を当てる。
トク、トク、と心臓は当たり前のように動いている。
呼吸もしている。生きている。
だが、その心臓の営みと「成功したい」という気持ちが、同じレベルにあるだろうか。
答えは明らかだった。
「俺は、本気じゃなかった。成功したいと口では言いながら、心のどこかで楽して稼ぐことばかりを夢想していた…」
朝日が、カーテンの隙間から差し込み始める。
夜が明けてしまう。
また、何も変わらない一日が始まる。
Aさんはゆっくりと体を起こし、鏡の前に立った。
そこに映っていたのは、寝不足と安酒でむくみ、生気の失せた男の顔。
愛妻を悲しませ、子供の未来を奪い、スタッフを失望させた、紛れもない自分の姿だった。
「このままじゃ、終わる」
それは、絶望の底から絞り出した、初めての偽りのない本心だった。
まだ夜は明けたばかりだというのに、まるで人生の最終回のような静けさがAさんを包んでいた。
物語は、ここから始まる。
いや、ここから始めるしかなかった。
第1章:現実を直視せよ
翌朝、Aさんがリビングへ行くと、愛妻が静かに座っていた。
テーブルの上には、息子の学資保険の「支払いをお願いします」という手紙。
口座にお金がなく、引き落としができなかったのだ。
「ご、ごめん。すぐ払うよ」
Aさんが慌てて言うと、愛妻は静かに首を振った。
「来月は大丈夫とか、もう聞きたくないの。お店の本当の数字、見せて」
「数字」という言葉に、Aさんは何も言えなくなった。
これまでずっと、売上が悪いのは景気や場所のせいだと、自分以外の何かのせいにしていた。
具体的な数字を見るのが怖かったのだ。
奥さんがいなくなると、Aさんは震える手で売上と使ったお金を計算し始めた。
売上は、月に40万円ほど。
そこから家賃などを引いていく。
そして、一番見たくなかった、自分がパチンコや飲み代で使った金額を計算すると…20万円以上。
売上の半分を、遊びで溶かしていた。
「うそだろ…」
頑張っているつもりだった。
でも、それはただの「つもり」だった。
「月商40万円、うち20万円を浪費」
――これが、言い訳できない「事実」だったのだ。
その瞬間、頭がスッとした。
誰のせいでもない。
全部、自分が原因だ。
「成功するかしないかなんて、結局は『やるか、やらないか』。ただそれだけじゃないか」
Aさんはそう呟くと、台所にあった焼酎のボトルを掴み、裏のゴミ箱に叩きつけた。
ガシャン!と大きな音が響く。
続けて、部屋にあったタバコとパチンコ雑誌も、全て同じ場所に投げ捨てた。
全てを失う寸前で、Aさんはようやくスタートラインに立った。
見るべきは「頑張ってるつもり」という感情じゃない。
「数字」という事実だけ。
そして、やるべきことはたった一つ。
決めたことを、実行する。それだけだった。
第2章:貧困マインドを捨てる
焼酎とタバコを捨てたからといって、すぐに人生が変わるわけではなかった。
むしろ、Aさんを待っていたのは、飼い主を失った猛獣のような強烈な禁断症状だった。
仕事の合間、ふとした瞬間に指が勝手に動き、スマートフォンのパチンコ情報サイトを開こうとする。
そのたびにAさんは「違う!」と自分に言い聞かせ、慌ててブラウザを閉じた。
夕暮れ時、整骨院の片付けを終えると。
長年の習慣が「疲れただろ?酒でも一杯どうだ?」と悪魔のように囁きかけ、足が自然と居酒屋の方角へ向かいそうになる。
Aさんは唇を固く噛み締め、逃げるようにして帰路についた。
そうして家に帰っても、そこにあるのは手持ち無沙汰という名の苦痛だった。
これまでギャンブルや酒、意味のないネットサーフィンで埋め尽くしてきた夜の時間が、ぽっかりと巨大な穴のように空いてしまったのだ。
テレビをつけても面白くなく、ただ静寂が重くのしかかる。
その静寂の中で、Aさんは一つの衝撃的な事実に思い至る。
「俺は、『金がないから何もできない』と思っていた。
だが、違った。真実はその真逆だ。
『どうでもいいことに金と時間を浪費していたから、金がなかった』んだ」
問題は財布の中身の貧しさではなかった。
自分自身を貧乏に追い込んでいたのは…
浪費と現実逃避を繰り返す自分の「考え方」、つまり「貧困マインド」そのものだったのだ。
それに気づいた瞬間、目の前の霧が晴れていくような感覚に襲われた。
決意を新たにしたAさんの行動は、早かった!
まず、スマートフォンからギャンブル関連のアプリ、惰性で時間を奪っていたSNSアプリを全て削除した。
夜の深酒もきっぱりとやめ、代わりにノンアルコールビールを飲むことにした。
そうして中毒的な習慣を手放した代わりに、Aさんは人生で最も価値のあるものを続々と手に入れ始めた。
一つは「時間」。
夜、過ごす代わりに、本棚の肥やしになっていた整骨院の経営に関する本を手に取った。
どうすれば患者さんがもっと喜んでくれるか?
リピートしてくれるのか?
を考え、ノートに必死に書き出してみた。
今まで一度も真剣にやったことのない、未来への投資だった。
もう一つは「集中力」。
アルコールと過剰なギャンブルの情報で常に霧がかっていたような頭が、少しずつクリアに晴れていくのを感じた。
施術中の患者さんの体の状態や、何気ない会話に隠された痛みの本質が、以前よりずっと深く、鮮明に理解できるようになった。
そして何より大きかったのは、自分との約束を守れたという、ささやかだが確かな「自信」だった。
「やめる」と決めたことを、自分の意志で実行できた。
その小さな成功体験が、自分を管理する力、つまりセルフマネジメント能力の揺るぎない土台となったのだ。
タバコをやめることを愛妻に告げた
最初は「どうせ三日坊主でしょ」と冷たく笑われた。
でも、彼女のその一言が、逆に火をつけた。
「絶対に変わる。もう家族を泣かせない」。
その夜、寝顔で無邪気に笑う子どもの横で、強く心に誓った。
まだ月商は40万円のままだ。
銀行口座の数字も、昨日と何も変わっていない。
しかし、Aさんという人間そのものは、昨日とは全くの別人になっていた。
貧しいマインドという見えない牢獄から自らを解放した時、人生を立て直すための本当の資源が、自分の内側に眠っていることに彼はようやく気づいたのだ。
第3章:実行・行動だけが人生を変える
貧困マインドを捨て、経営書を読み漁る日々が始まった。
健太の頭の中は、マーケティング用語やリピート率向上のテクニックで満たされていった。「LTV(顧客生涯価値)」「USP(独自の強み)」「ペルソナ設定」。
知識が増えるたび、まるで自分がすごい経営者になったかのような錯覚に陥った。
しかし、現実は非情だ。
知識をいくら詰め込んでも、整骨院の売上はピクリとも動かない。
相変わらず予約の電話はまばらで、待合室の椅子が埋まることはなかった。
「おかしいな…。本に書いてある通りなのに、何で結果が出ないんだ?」
ある日の夜
Aさんはノートに書き殴った事業計画を見つめながら途方に暮れていた。
その時、ハッとした。
自分は、最も重要なことを見落としていた。
学んだだけで、何一つ「実行=行動」していなかったのだ。
「これでは、野球のルールブックを丸暗記しただけで、一度も打席に立ったことのない選手と同じじゃないか」
頭でっかちになっていた自分に気づき、愕然とした。
成功する人としない人の差は、知識の量ではない。
知ったことを、たとえ一つでも「すぐやるか、やらないか」の差でしかない。
翌朝
Aさんは壮大な事業計画を考えるのをやめた。
その代わり、自分に一つだけ、絶対に守れる「小さな約束」を課すことにした。
「毎朝、いつもより早く院に来て、トイレと玄関を完璧に掃除する」
馬鹿馬鹿しいほど小さな一歩だ。
だが、今の自分にはそれが必要だと感じた。
その日から、Aさんの朝は変わった。
まだ薄暗い中、整骨院のドアを開け、雑巾を握る。
便器を磨き、床を水拭きし、玄関を掃き清める。
最初は面倒で、「こんなことをして何になるんだ…」という思いもよぎった。
しかし、「やると決めたからやる」と、ただ無心で続けた。
変化は、一週間も経たないうちに現れ始めた
まず、院内の空気が変わった。
隅々まで磨かれた空間は清々しく、Aさん自身の心まで洗われるようだった。
そして、その変化に患者さんたちが気づき始めたのだ。
「先生、最近なんだか院が明るくなったわね。気持ちがいいわ」
長年通ってくれている患者さんのその一言が、Aさんの胸に深く突き刺さった。
素直に、嬉しかった。自分の「行動」が、誰かに届いた初めての瞬間だった。
その小さな成功体験が、錆びついていた逆転の歯車を、ギシリと音を立てて回し始めた。
毎朝30分早く起きて掃除をする姿を見て、愛妻の目つきが少し変わった。
「なんか最近、顔が変わったね」。
その言葉が、何よりのご褒美だった。
掃除という小さな約束を守れたことで得た自信は、次の行動へとAさんを突き動かした。
本で読んだ「雨降りの際は、必ず玄関までお迎えに行って、濡れた服を拭くタオルを患者さんにお渡しする。
同時に、自分は患者さんの濡れた傘を丁寧にタオルで滴を拭き取る」という接客術。
以前なら「恥ずかしい」「そこまでやる意味ある?」とやらずにいたことを、その日の午後の患者さんから、すぐに実行に移した。
最初はぎこちなかったが、感謝を込めてお一人お一人丁寧にやってみると、ほとんどの患者さんが驚き、そして嬉しそうに「ありがとう」と言ってくれた。
その反応が、Aさんの心を温めた。
成功者がやっていることは、魔法でも何でもなかった。
結局のところ、彼らは「やるべきだと分かっていることを、ただ毎日やり続けている」だけなのだ。
そのシンプルな真理に、Aさんはようやくたどり着いた。
実行=行動こそが、現実を変える唯一の力なのだと、掃除をしながらAさんは体で学んでいた。
第4章:痛みをリサイクルせよ
小さな成功体験を積み重ね、Aさんの中には確かな自信が芽生え始めていた。
毎朝の掃除で院の雰囲気は良くなったが、それだけでは売上を劇的に変えることはできない。
攻めに転じる時が来たのだ。
「新規の患者さんを呼ばないと、始まらない」
なけなしの運転資金をかき集め…
Aさんは勝負に出ることにした。
本で学んだ知識を総動員し、近隣の住宅にポスティングするためのチラシを3000枚作成した。
最小の努力で最大の結果を得るには、これが一番の「最短距離」のはずだった。
「最新の筋膜リリースで、あなたの腰痛を根本改善!」
――我ながら、完璧な出来栄えのチラシに思えた。
週末を返上し、汗だくになって一軒一軒ポストに投函して回った。
月曜日
Aさんは朝から期待に胸を膨らませ、電話の前で待機していた。
「きっと、電話が鳴りやまないはずだ!!」
しかし、その期待とは裏腹に電話は鳴らなかった。
火曜日も、水曜日も、一本の問い合わせすらなかった。
投じた資金と労力は、まるで湖の水面に投げた小石のように、何の波紋も立てずに消えていった。
Aさんの心は、ポキリと音を立てて折れた。
「やっぱり、俺は何をやってもダメなんだ…」
再び湧き上がる自己嫌悪。
以前の自分なら、ここで間違いなく自暴自棄になり、酒に逃げていただろう。
だが、今のAさんは違った。
床に散らばった売れ残りのチラシを、ただ悔しさに震えながら睨みつけた。
最短距離だと思った道は、行き止まりだったのだ。
「このまま終わらせて、たまるか…!」
諦めてやめてしまうことこそ、この痛みを「無駄」にすることだ。
Aさんは、悔し涙をこらえながら、失敗したチラシを分析し始めた。
なぜ、誰の心にも響かなかったのか。
最短距離を見つけること自体は、悪いことじゃない。
だが、たとえ地図上で最短の道を見つけても、その道を実際に歩かなければ目的地には着けない。
自分は、汗を流して歩くことを軽視し、魔法のようなテクニックに頼りすぎていたのだ。
その時、Aさんは気づいた。
チラシに書かれているのは、「筋膜リリース」だの「根本改善」だの、専門用語を並べただけの独りよがりなメッセージだった。
そこには、患者さんが本当に感じている「痛み」への共感が、一欠片もなかったのだ。
Aさんは、FXで大金を失った時の、あの心臓が凍るような絶望感を思い出した。
愛妻を失望させた時の、胸が張り裂けそうな罪悪感を。
あのどん底の痛みと、今、体の不調に苦しんでいる患者さんたちの痛みは、本質的に何が違うのだろうか?
「そうだ…。患者さんが欲しいのは、専門的な治療法の説明じゃない。
『この辛さから解放されたい』
『朝、痛みなくスッキリと目覚めたい』
『孫を思いっきり抱きしめてあげたい』…。
そういう、未来への希望なんだ」
自分の過去のどん底体験が、初めて他者の痛みを理解するための「武器」に変わった瞬間だった。
たとえ遠回りに見えても、自分が正しいと思った道を歩くこと、地道に実行することこそが、本当の成功への道なのだ。
やらなかった後悔より、やって失敗した経験の方が、何倍も価値がある。
あの痛い失敗広告は、Aさんにとって何よりも雄弁な教科書となった。
Aさんは、新しいチラシのキャッチコピーを考え始めた
もう専門用語は使わない。
ただ、自分の言葉で、痛みに苦しむ人の心に寄り添う。
借金、クレーム、そして大失敗した広告。
過去の全ての痛みが、未来を照らすための燃料に変わっていく。
痛みはリサイクルできる。
Aさんは、そのことを確信していた。
そして、新たに迎えたスタッフにも、自分の過去の借金や失敗を正直に語った。
「二度と、子どもに惨めな背中は見せない。そのために動く」。
そう口にしたとき、スタッフの目が初めて潤んだ。
第5章:仕組み化で時間を取り戻す
チラシの失敗から得た教訓は、Aさんの行動をより具体的で、地道なものへと変えていった。
Aさんは毎晩、翌日にやるべきことをノートに細かく書き出すようになった。
- 「患者さん一人ひとりの会話の要点を記録する」
- 「毎日1時間、新しい施術の練習をする」
- 「院のブログを1記事更新する」
やるべきことは明確だった。
しかし、数日もすると、新たな敵が姿を現した。
それは、「自分への甘え」という、最も手強い内なる敵だった。
ある雨の降る夜
最後の患者さんが帰り、Aさんはどっと疲れを感じて椅子に座り込んだ。
「ブログ更新…今日は疲れたし、明日でいいか…」。
その言い訳が頭をよぎった瞬間、Aさんは鏡に映る自分と目が合った。
そして、ふと過去の記憶が蘇る。
以前、スタッフが予約時間を間違えるというミスを犯した時、自分は何と言っただろうか。
「プロ意識が足りないんだよ!」と、人前で容赦なく叱責した。
貸したお金の返済が遅れた友人には、「約束が違うだろ!」と激しく詰め寄った。
他人が犯した約束違反には、あれほどまでに怒りのエネルギーをぶつけていた。
「…じゃあ、鏡の中のお前はどうなんだ?」
Aさんは、鏡の中の自分を睨みつけながら、心の内で問い詰めた。
「他人のミスは許せないくせに。
自分が決めたタスクをやらなかったことには『まあ仕方ない』で済ますのか?
なんで自分にだけ、そんなに甘いんだ。
他人を責めるのと同じ熱量で、自分を責めてみろよ!」
それは自己否定とは違う、魂からの叱咤激励だった。
他人に対して怒る力があるのなら、その同じ力で自分自身を変えられるはずだ。
仕事の取引先との約束を破れば、信用を失い、罰を受ける。
それなのに、自分との約束は、破っても今の自分に直接的なダメージがないからと、いとも簡単に破り続けてきた。
その積み重ねが、5年後、10年後の「何も変わっていない自分」を作るのだ。
自分の責任を取れるのは、自分しかいない。
「意志の力だけじゃダメだ…。俺は弱い。
だからこそ、感情や気分の波に左右されず、やるべきことをやらざるを得ない『仕組み』が必要なんだ」
その気づきが、Aさんを次のステージへと導いた
Aさんはまず、バラバラだった予約管理から手をつけることにした。
施術中に鳴る電話で集中力を削がれることが多かったため、ネット予約管理システムを導入。
患者さんが24時間いつでもスマホから予約・変更できるようにした。
次に、リピート率を高めるためのLINE公式アカウントを開設。
来院後のお礼メッセージや、次回の来院日を知らせるリマインダーを自動で配信できるように設定した。
これで、自分が忘れても、仕組みが患者さんとの関係を繋いでくれる。
さらに、これまで自分の頭の中にしかなかった施術の手順や患者さんへの説明内容を、一つ一つ文章に書き出し、「マニュアル化」を始めた。
いつか新しいスタッフが入ってきた時に、自分と同じレベルのサービスが提供できるようにするためだ。
これらは全て、Aさんが「オーナーとして頑張る」のではなく、「仕組みが自動で回る」状態を作るための布石だった。
自分との約束を守り続けるために。
そしてもっと大きな目標に時間とエネルギーを集中させるために。
Aさんは感情に頼らない鉄壁のシステムを、一つずつ着実に築き上げていった。
仕組み化を進めることで、彼のプライベート時間が少しずつ増えていった
夜10時、久しぶりに子どもと風呂に入る。
「パパ、今日は早いね!」
その小さな声に胸が熱くなった。
――このために、俺は変わろうとしているんだ。
再来率が上がり、口コミが増え、気づけば広告費をかけなくても予約が埋まるようになった。
仕組みが働くことで「頑張る父親」から「余裕のある父親」に変わっていく。
第6章:月商300万円の世界
仕組み化と地道な実行が噛み合い始めると、整骨院は嘘のように好転し始めた。
新しいチラシからは問い合わせが入り、LINEを活用したリピート戦略は見事にハマった。
Aさんの丁寧な施術と心からの接客は口コミを呼び、患者が患者を紹介してくれる好循環が生まれる。
月商40万円だった売上は、わずか半年で100万円の大台を突破した。
通帳の数字が増えるたびに、Aさんは失いかけていた自信を取り戻していった。
しかし、目標だった100万円を達成した時、Aさんの心には達成感と同時に、奇妙な空虚感が広がっていた。
「俺は、ただこの数字を追いかけるために、必死になってきたんだろうか?」
ある夜、Aさんは一人、自分に問いかけた。
月商300万円という次の目標をノートに書きながら、その数字がただのインクの染みにしか見えなかったのだ。
その時、脳裏にかつてYouTubeで見た言葉が蘇った。
『ポイントは、何をしたいかではなく、どうありたいかだ』
Aさんはペンを置き、目を閉じた。
そして、心の奥底にいるもう一人の自分に問いかける。
「もし、誰かに見栄を張る必要も、過去の自分を見返す必要もなかったとしたら、お前は本当は、どう生きたいんだ?」
答えは、「月商300万円の整骨院オーナーになる」という職業の話ではなかった。
もっと温かく、具体的な情景が浮かび上がってきた。
- 週末は、いつもクタクタで寝て過ごすのではなく、息子とキャッチボールをしたい。
- 愛妻には、「値段を気にせず好きな服を選んでいいよ」と言ってあげたい。
- お金の心配をせず、家族との時間を心から笑って過ごせる、そんな父親、そんな夫で「ありたい」。
理想の生き方が見えた瞬間、月商300万円という目標の意味合いが全く変わった。
それはもはや単なる数字ではなく、愛する家族の笑顔を守るための「手段」なのだと、はっきりと理解できた。
その週末
Aさんは売上100万円達成の記念として、家族を少し高級なレストランに連れて行った。
これまでは考えられなかった贅沢だ。
丁寧にテーブルへ案内され、一流のサービスを受けながら食事をする。
目の前では、美味しい料理に目を輝かせる息子と、穏やかに微笑む愛妻がいた。
Aさんは、その光景を忘れないように、目に焼き付けた。
「これだ。俺が手に入れたかったのは、この時間、この笑顔なんだ」と。
帰り道、車で偶然通りかかった緑豊かな住宅街
洒落た家々が並ぶのを見て、愛妻がぽつりと呟いた。
「素敵ね…。いつか、こんなお庭のあるお家に住んでみたいな」
以前のAさんなら、「無理に決まってんだろ」と心の中で毒づいていただろう。
しかし、その時、Aさんの口から自然に出た言葉は違った。
「そうだな。叶えよう。俺が絶対に叶えてやる」
その言葉は、もはや夢物語ではなかった。
レストランで感じた幸福な空気、愛妻の言葉。
その全てを「肌で感じた」ことで、理想の未来は手の届く場所にあるのだと、Aさんは確信できた。
「自分ならやれそうだ」という感覚が、彼の全身を駆け巡る
理想の「生き方」という、決してブレることのない羅針盤を手に入れたAさんの行動は、そこからさらに加速した。
もう、Aさんの努力は「義務」ではなかった。
「家族の笑顔」という最高の報酬が待っていると知っているからだ。
それから半年後、Aさんの整骨院の月商は300万円を突破した。
手に入れたのは、お金だけではなかった。
失っていた家族からの信頼、そして何より、自分自身への誇りだった。
愛妻に心から感謝を伝え、息子の成長を心置きなく見守れる日々。
新しく迎えたスタッフにも、自分の経験を元に、自信を持って指導ができる。
月商40万円の頃は、家族で外食さえためらった。
今では、愛妻にサプライズで旅行をプレゼントできるまでになった。
「昔は本当に心配だったけど、今は安心してついていける」
そう言って涙ぐむ愛妻の手を握りしめたとき、胸の奥に「やっと家族を守れる男になれた」という実感があふれた。
売上300万円。
数字はただの結果だ。
本当に手に入れたのは――「誇れる自分」と「家族の笑顔」だった。
Aさんは、かつての自分がいた絶望の淵を振り返る。
あの時とは違う、全く新しい「人生の景色」が、Aさんの目の前には広がっていた。
終章:「やるか、やらないか」
月商300万円を達成した今、Aさんの日常は、かつてとは比べ物にならないほど穏やかで、満たされたものになっていた。
しかし、Aさんが昔と変わらず、毎朝誰よりも早く院に来て、トイレと玄関を磨き上げる習慣だけは一日も欠かしたことがない。
それは、初心を忘れないためというよりも。
あの絶望の淵にいた自分を忘れないためだった。
鏡に映る自分に問いかけ、事実と向き合い、小さな約束を守ることから全てが始まった。
あの朝があったからこそ、今の自分がある。
掃除は、そのことを体に刻み込むための、神聖な儀式となっていた。
ある日
Aさんは母校の柔道部で後輩たちに講演を頼まれた。
テーマは「夢を叶える方法」。
人前で話すのは苦手だったが、断る理由はなかった。
壇上に立ったAさんは、自分の過去をありのままに語った。
FXとギャンブルに溺れ、家族を泣かせ、売上40万円のどん底でもがいていた日々。
カッコ悪い過去も、失敗も、何一つ隠さなかった。
静まり返る道場で、Aさんは最後にこう締めくくった。
「俺が特別な才能を持っていたわけじゃない。
特別な環境にいたわけでもない。
成功の本質は、もっとシンプルだった。
それは、人生のあらゆる局面で迫られる『選択』だ」
Aさんは、畳に座る若い後輩たちの目を一人ひとり見つめながら続けた。
「言い訳を探して現実から目を背けるのか?
それとも事実を直視して一歩を踏み出すのか?
感情に流されて自分との約束を破るのか?
それとも歯を食いしばってやり遂げるのか?
痛みを言い訳にして諦めるのか?
それとも痛みをバネにして高く跳ぶのか?」
その全ては、誰かに決められるものではない。
自分自身が、今この瞬間に、どちらかを選び取っているだけなのだ。
「今日から変われる人間と、一生変われない人間の違いは、能力の差じゃない。
ただ、その選択の差でしかない。
俺は、どん底のあの日、『やる』という選択をした。それだけなんだ!!」
講演が終わり、Aさんは後輩たちからの質問に丁寧に答えていた。
その時、一人の部員がおずおずと手を挙げた。
「あの…俺、自分に自信がなくて、いつも試合で実力が出せません。どうしたら、Aさんみたいに強くなれますか?」
その問いは、かつての自分自身からの問いのように聞こえた。
Aさんは、その生徒の肩にそっと手を置き、優しいが、しかし力強い声で答えた。
「いい質問だな。みんな自信が欲しいと思ってる。
でもな、自信っていうのは、何か大きなことを成し遂げた後についてくるものじゃないんだ。
鏡の中の自分との小さな約束を、たった一つ守れた朝に、心の中で静かに生まれるものだ。
俺がそうだったから」
Aさんは一呼吸置いて、その生徒の目を真っ直ぐに見つめた。
「だから、まずやってみろ。
明日、誰よりも早く道場に来て、畳を一枚、心を込めて拭いてみるんだ。
世界は、そこから変わり始める」
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